口座売買は犯罪です。それでその後は?
口座売買は犯罪です。犯罪収益移転防止法で明確に禁じられており、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。売られた口座は特殊詐欺や投資詐欺の振込先となり、その先には現実の被害者がいます。「借金があった」「闇バイトだと知らなかった」という弁解は、捜査でも裁判でも基本的に通用しません。
最近だと、社会の仕組みを知らない若者がバイト先の店長に「口座作っておいて」と言われ、後から「その口座ダメだったわ、すまんかった俺が預かるから。給料は現金払いでやる、これは迷惑料な」などの手口で騙して買い取る、なんて事態も起きているようですね。
ところで、口座売買をして捕まった後、どうなるのでしょう?罰金なり懲役なり不起訴なりになってシャバに戻ってきたら?
「凍結口座名義人リスト」という仕組み
口座売買に関与すると「凍結口座名義人リスト」に載ります。
警察は犯罪利用口座の名義人情報をリスト化しており、金融機関は犯罪に使われた口座だけでなく、同一名義の他行口座まで凍結し新規の口座開設を謝絶します。要は「口座を売ったら銀行が使えなくなる」ということです。
問題は、この仕組みの法的性格にあります。口座売買人リストは法律に基づく制度ではなく、警察庁と金融団体の協定によって運用されています。掲載の基準、掲載が続く期間、削除の手続は、本人には必ずしも明らかではありません。実務上、リストからの削除には警察や金融機関との個別の交渉が必要とされ、弁護士に依頼してようやく道を探る、という世界です。
金融排除から更生できるかな?
この制裁には、裁判所の判断が入らず、期限の定めがなく、更生のプログラムもない私的な無期懲役です。現代社会で銀行口座がなければ、社会生活には大きな制約を受けることになります。給与の受け取りも出来ない、家賃の引き落としも出来ない、ネット環境にも繋がれない。電気ガス水道は前科者でも契約できるのに、銀行口座は無期限追放が可能なのです。この状態を金融排除と言います。
この状態に陥ると、更生が極めて困難になります。給与の現金払いに対応している企業はもはやわずかになりました。法的には現金払いが原則なんですけどね。つまり、就職先が限定されます。かなり遅れた企業か、現金商売の企業。あとは・・・口座を持てない企業ですかね。何かしらの理由で商売をしているけれども、銀行に口座開設を断られる企業。そういうところで働く必要が出てきます。
次の犯罪へ
生きていると、銀行口座がないと出来ないことって本当に多いんですよね。では、もしどうしてもそういう事態になったら?
一つは、誰かにお願いして口座を一時的に使わせてもらうことです。犯罪ですね。貸した側もリスト入りです。
もう一つは、自分がやったことをもう一度誰かにやる方法です。現金商売の店でアルバイトに対して「給与振り込み用の口座を作ってきて」と言って・・・犯罪ですね。売った側もリスト入りです。
こうしてお願いされたり、詐取されたりしたという情報そのものがまた「ブラック情報」として裏社会で流され、当人たちが脅されて闇社会へ流れるというルートも既に確立されているようです。トクリュウなんかの捨て駒に使われるんですかね。表の世界に戻れないという人材は裏社会の人間からしたら都合がいいですからね。
金融排除の連鎖を無くす「監視付き口座」
こうした事態に至っている原因は、一つには金融機関が個人客のことを軽視しているという事があるでしょう。口座を作りたいと言って支店に行ったとしても、都銀はもちろん最近は第二地銀レベルでも嫌な顔しますからね。信用金庫でようやく話聞いてもらえるかな、という感じです。結果として最近の若い起業家がPaypay銀行しか口座持ってない、なんて話も出てきて頭が痛くなります。
もう一つは、警察が金融排除について無関心で、軽視しているという点もあるでしょう。目の前の犯罪を阻止できれば表の社会から排除される人間がどれだけいても平気、という感覚があるように思います。自分たちの仕事は取り締まりまで、治安維持や包摂は誰かの仕事と思っているのかもしれません。
こうした状況を改善するには「監視付き口座」しかないでしょう。金融排除は裁判所での判決が必要な刑罰とし、無期を含めた刑の期間を定め、その間は口座の保有を制限する、そして口座は政府による監視を行うこととしましょう。ゆうちょ銀行か警察信用組合が良いでしょう。一定期間犯罪に使われた経歴がなければ、再び他の金融機関の口座を作ることが出来るようになるわけです。
金融犯罪の連鎖を止めるには、更生プロセスをきちんと定める必要があります。監視付き口座による脱・金融排除こそがそれに資するものと考えています。


