アベノミクスは成功だった

今日もTwitterの方で「アベノミクスの失敗」と言って辻説法をしていた人がいたのですが、これは経済の見方を理解していないように思いますので、解説していきます。

ところでアベノミクスって何だっけ?

アベノミクスというのは第二次安倍政権下で行われた経済政策の総称ですが、実は中身が判然としていません。

その時その時の経済状況に応じて政策が少しずつ修正されてきているため「これがアベノミクス!」というものは実はないんですよね。

実際効いたのは「マインドの転換」

なので、アベノミクスの政策の中で効いたのはこれ、というのはないのですが、安倍政権成立によって「社会のマインドが不況から回復に変わった」というのがあります。ムードが前向きになったというか。

これは2つの出来事によって起こりました。1つは「三本の矢」の表明、もう1つは「東京オリンピック誘致成功」です。

それまで日本には経済政策をめぐって3つの派閥が対立していました。異次元の金融政策を実施すれば景気が回復するんだと主張するリフレ派、積極財政をすれば景気が回復するんだと主張する財政出動派、規制緩和をして構造改革をすれば景気が回復するんだと主張する構造改革派です。日本人の主要な経済人はだいたいがこれのどれかに属していて、日々論争を繰り広げていたわけです。

アベノミクスでは、これら3派をまとめて「三本の矢」とし、全部やると宣言したわけです。「異次元緩和・国土強靭化・構造改革」です。これで何となくみんな納得してしまった。実際には金融政策は不徹底でしたし、財政政策はスローガン先行でしたし、構造改革はまるで取り組まれていませんが、とにかくみんな納得して「これで自分の意見が通って景気が回復するんだ」と思ったんですね。景気は人の気持ち次第なところがあるので、これで実際に景気が回復に向かってしまった。

そして、オリンピックの誘致成功です。オリンピックの背後には色んな汚い話が一杯あったわけですが、とにかく日本に決まったとなった瞬間、経済に興味のない人たちのマインドが変わってしまいました。日本でオリンピックをやるんだ、これからそこに向けて全てが動き出すんだ、自分の生活も変わるんだとみんなが思い込んだんですね。景気は人の気持ち次第なところがあるので、またまたこれで実際に景気が回復に向かってしまったんです。

このように、人の気持ちを前向きにさせることで実際にそれを起こしてしまうというのが、アベノミクスの成功パターンでした。

アベノミクスはどういう効果があったか

アベノミクスは意味がなかった、給料が上がらなかったという意見があります。しかしサムネの通り、実際にはアベノミクスをきっかけに給料が上がっていることが分かります。

サムネの画像、実は毎年最新の数字に更新したりしているのですが、すっごくTwitter上での可燃性が高いんですよ(笑)    見せ方を工夫しているというのもあります。

そうすると今度は実質賃金がと言ってくる人がいるんですが、そういう人にはさらに下の画像を貼ります。

就業者数の推移.png 24.28 KB
そう、アベノミクスは雇用を増やしたんですね。およそ500万人の雇用増が安倍政権下で起きています。安倍政権発足時の失業者は300万人しかいなかったのに500万人が働き始めたんです。日本の統計ではニートや家事手伝い、専業主婦は失業者に含まれないので、そういう形で隠れ失業をしている人たちが一斉に出てきたんですね。

みんなが「これから景気は良くなるぞ」と思い、だったら投資していこう、人も採用していこうと思い、それらが本当に景気を押し上げてしまったんです。

アベノミクスの恩恵がなかった人たち

ところがこの時期、明確に割を食った人たちがいます。アベノミクス前から既に働いていた人たちです。この人たちの給料はアベノミクス期を通じてほとんど上がっていません。これは、隠れ失業を含めた失業者が多すぎたため、給料を上げるより新規採用をした方が有利だったためと考えられています。

実質賃金が上がっていない、という批判はここにあります。失業していた人や就活をしていた人、専業主婦をやめて働き始めた女性などには恩恵が大きかったのですが、単身者の男性や専業主婦家庭の男性はまるで恩恵を感じられない。ただ、この層って実は多いんですよね。これが「実感ベースでアベノミクスの恩恵を感じている人と感じていない人の分断」に繋がっていると思います。

私は個人的には、最も貧しく哀れな人である失業者が最初に救われたのはいいことだと思っています。一人当たり実質賃金は働いていない人は分母に含まれないので、派遣切りなどで低賃金労働者が切られると上がるという性質もあり、失業が多い期間には有効な数字ではありません。名目総額賃金の方が重要です。

資産価格も上昇し、さらに実感が分断された

アベノミクス期には株価も大きく上昇し、不動産価格も都心部を中心に大きく上昇しました。円安政策を取った事もあって海外投資も流行りました。

これはどういうことかというと、アベノミクスの勝ち組、負け組をさらに分断しているんですね。

典型的なアベノミクス勝ち組というと、「結婚して子供を持ち、夫は転職して年収アップ、妻は子供を保育園に預けて正社員で職場復帰。ペアローンを組んで都心にタワマンを買い、生活の余裕資金はNISAに突っ込んだ」というタイプの人たちです。

一方でアベノミクス負け組のペルソナは「夫は新卒からずっと同じ職場で正社員として働き、妻は専業主婦。郊外の一戸建てに暮らしており生活の余裕資金は堅実に貯金した」というタイプです。


後者の人たちは真面目に真っ当に暮らしているにも関わらず、アベノミクスの恩恵は一切ありません。前者の人たちはリスクテイクをしたとは言えますが、ここまで普通の人たちの明暗が分かれた時期というのも過去少なかったかもしれません。

完全雇用に達し、アベノミクスは終わった

アベノミクスは2018年から2021年ごろに終わったと考えられています。それは、完全雇用といって、特段理由もないのに仕事が見つからない人がいないという状態にほぼ達したと考えられる時期がこの時期だからです。

日本の雇用はコロナ前をなかなか超えられずにいます。これは少子高齢化もありますが景気の良さに対し労働供給が追い付かない状態になったのがコロナ直前だからです。

ですのでこの時期からは先ほどの「実質賃金」が大事になってきています。名目総額の重要性は下がり、一人当たり実質賃金の時代です。こうして安倍政権末期から現在まで、賃上げの重要性が叫ばれているというわけです。インフレが始まったので実質賃金はずっとマイナスで推移している一方、労働分配率が下がっており問題になっています。

総じていうと「アベノミクスの成否を問うのではなく、アベノミクスを超える政策が求められている」というのが今の日本の現状です。

まとめ

・アベノミクスは実態を伴っていなかったが、みんなの気持ちを前向きにして景気を回復させた
・アベノミクスは失業している人を救ったが、既に安定して働いている人には恩恵がなかった
・実質賃金の重要性は時代によって異なり、アベノミクス時代には低く今は高い
・アベノミクスは既に終わっており、次の課題解決が求められている

という感じです。まだまだ論点はたくさんあるのですが、全部書くと本当に本が何冊もかけてしまうぐらい多岐にわたるので、今日はこのくらいにしといたるわ!(関西お笑い風)