ニュースや国際情勢の話は割愛
ベネズエラのマドゥロ大統領が米軍に急襲され、アメリカに連れ去られました。ベネズエラでは歓迎する声が多いようです。ここでは国際情勢の話はせず、ベネズエラの今後について考えてみたいと思います。
ベネズエラはなぜ貧しくなったのか(昭和時代)
ベネズエラは産油国です。
産油国らしく、石油への経済依存が強く他の産業がほとんど存在しません。石油産業が国家の富の多くの部分を作り出しているにも関わらず、そこで発生している雇用はわずかでした。オイルショック以降、原油価格の高騰を背景にベネズエラは経済成長を遂げ、南米の大国となり、南米民主主義の成功国になりました。
しかし、国民生活は国有の石油会社が生み出す補助金にとって維持されており、ベネズエラ人が自ら稼げる状態ではありませんでした。ここに原油価格の下落が起きたのが1980年代です。ベネズエラの財政はみるみる悪化していきました。こうして1989年、公共料金の値上げや補助金の削減など財政改革に追い込まれ、国民生活が苦しくなります。
チャベスはどうやってベネズエラを豊かにしたのか(平成前期編)
こうした状況下でウゴ・チャベスはクーデターを起こし、その後選挙で政権を握ります。チャベスは「ボリバル革命」と呼ばれる社会主義政策を実施し、銀行や農地などの国有化を実施しました。
ところが、これらは実際には経済に好ましい影響を与えることはなく、実際に経済を好転させたのは2000年以降に始まる原油価格の高騰でした。国有の石油会社が息を吹き返し、バラマキが再開し、識字率や貧困率は大きく改善。チャベス政権は南米のスターとなります。
一方で石油産業以外の産業は以前と変わらず育たず、不透明な国有化が行われたことで外資企業は警戒心を強め、対ベネズエラ投資は減っていきました。唯一の例外は麻薬産業で、政権や軍と結びついた麻薬カルテルがベネズエラで発生し「太陽のカルテル」と呼ばれ始めます。
また、このころから石油会社の設備投資がないがしろにされはじめ、支持率のためにバラマキを強行するという態度が目立つようになりました。
そして崩壊へ(平成後期・令和編)
こうした中、リーマンショック、シェール革命、再生可能エネルギーの拡大などが起き、特に2014年以降、原油価格は大きく下がっていくようになりました。チャベスは2013年に死去していましたが、後継のマドゥロ政権は支持率維持のためのバラマキを止めることが出来ず、石油会社から生み出される資金をどんどん福祉につぎ込むようになりました。
その結果、石油会社の設備更新が出来なくなり、精製施設などの稼働が止まります。これによってベネズエラは、石油価格が上昇しても経済が回復しなくなるという事態に追い込まれました。ベネズエラでハイパーインフレが発生します。
これに対しマドゥロ政権は価格統制で対抗したため、統制物価と実需物価が乖離。闇市が発生するようになり物資が庶民に回らなくなります。この頃には民間企業や外資の資産を政府が強制接収するようになり、誰も目に見える投資をしようとしなくなります。
しかしながら、麻薬ビジネスはそもそもが裏ビジネスなので表向きの対処は出来ず、それどころか軍の収入源として、そして政権を維持する資金としてマドゥロ政権は麻薬ビジネスに積極的に関わり、コロンビアで生産されたコカインをベネズエラ経由でアメリカに密輸するという流通経路を確立させます。
こんな状況なので、政権交代なんかしたら大変な目に遭うと分かっているマドゥロは、不正選挙を実施します。足下に世界最大の油田を抱えていながら、麻薬ビジネスと不正選挙で生きるしかなくなったマドゥロ政権はついに見放され、2025年のノーベル平和賞は野党指導者のマリア・コリーナ・マチャドに授与されることになりました。「この賞をトランプ大統領に捧げる」と言った人ですね。
こうした歴史的経緯を踏まえて
マドゥロ政権がいよいよ崩壊し、新政権が誕生する中で、ベネズエラはこれからどうやって食べていくべきなのでしょうか?
一つは当然ですが、石油産業の復活です。国有石油会社を立て直し、原油輸出を再開し、外貨収入を得なければなりません。
もう一つは国内産業の振興です。麻薬ビジネスを続けるわけにはいかず、石油産業に依存していては三度目の危機が来ます。農業と製造業を振興し、アメリカやEUへの輸出ルートを開拓し、石油産業がなくても生きていける人を増やす必要があります。
金融政策としては、米ドルや石油備蓄などと通貨価値を連係し、通貨の大幅な値上がりや値下がりを防ぐ仕組みを作ることです。これには財政の健全化が必要です。
また、当面の国民生活、特に軍や警察といった治安機関を動かす資金が必要です。これがなければ再度麻薬ビジネスに手を出さざるを得ません。
そうなると、それなりに巨額の資金が必要で、それは国有石油会社の売却や利権の切り売り、世界銀行からの融資、そして純粋な経済支援がなければならないでしょう。アメリカは南米地域の安全や覇権、また麻薬の再流入阻止に関心があるのなら資金を提供する必要があるでしょう。日本の関わり方は石油安保の一環として関わるやり方が考えられます。


